宮城県 堤焼

堤焼

江戸時代17世紀末から始まり、300年以上伝承されている堤焼。皿や湯のみなど、素朴な日用品を中心とする仙台ゆかりの焼物です。黒釉(こくゆう)に糠白(ぬかじろ)釉を奔放に流し掛けした、海鼠(なまこ)釉が特徴で、仙台でとれる良質の粘土が使用されています。唯一、伝統と技を受け継ぎ今に伝えている堤焼乾馬窯ですが、震災後はレンガの破損や土台の傾きにより、一部の窯が使用不可能になっています。本プロジェクトでは破損してしまったガス窯の修復を支援しております。

窯元訪問

全国の励ましを力に、立て直しを!

仙台市泉区の堤焼乾馬窯を訪問しました。震災により3基のガス窯が大破。1978年の宮城県沖地震後に造り直したという登り窯1基も、レンガが崩れ落ち使用不能となっていました。支援プロジェクトでは、ガス窯1基の修復を予定しています。

4代目針生乾馬さんの長男の久馬さんは「当初は立て直せるか不安だったが、全国からの励ましが力になった。」と復興への想いを語ってくださいました。

堤窯
堤窯

「海鼠(なまこ)釉のデザインを考えています。」

湯飲みなどの小さな器が焼ける小型ガス窯1基の修復作業は、2012年3月後半から開始します。再び火が入るのは5月ごろの予定。修復された窯で最初に焼くのが、今回のプレゼント用のコーヒーカップとソーサーです。

「海鼠(なまこ)釉のデザインを考えている。復旧・復興のひとつの形として愛用してもらえたらうれしい。」と語る針生さんの言葉に震災を乗り越え受け継がれていく伝統工芸の力を感じることができました。

修復作業開始

ガス窯の修復作業が完了!

震災によって破損して使用することができなくなっていた小型のガス窯の修理が行われました。

震災によって地面が傾いてしまった場所から、平らな場所におよそ4トンの窯を移動し再設置するという大掛かりな作業です。修理業者の方々とともに、窯元の皆さんも参加して、一日がかりの作業となりました。

震災によって大型のガス窯は現在も使用不能となっているため、今回のガス窯の修理は本当に嬉しいと窯元の方々も大喜びでした。

堤窯
堤窯

6月初旬に火入れ式を実施予定。

今回修理したガス窯の火入れ式は、2012年6月初旬に窯元で行う予定です。

その後は現在稼動している中型のガス窯とともに、造りためたカップを焼いていく予定とのこと。

震災の爪痕がまだまだ残る中、今後も積極的に創作活動に取り組んでいきたいとおっしゃっていたことが印象的でした。

次回は火入れ式の模様をお伝えします。

火入れ式

修復した窯に火が灯る

2012年6月1日、本プロジェクトで修復されたガス窯の火入れ式がとり行われました。加茂神社の神主さんによる神事に続き、関係者の見守る中、4代目針生乾馬氏が窯に火を灯しました。

針生当主は「皆さんの支援のお陰で震災を乗り越えられた。これからも伝統文化をしっかり守っていきたい」と話されていました。

堤窯
堤窯

伝統のなまこ釉のコーヒーカップをお届け

震災によって4基あった窯の全てが被害を受け、そのうち2基に関しては未だに復旧の見通しが立たず、震災前の状態に戻るにはまだまだ時間が必要ですが、針生久馬氏は「完全復活とは言えないが、復旧した窯を使って、皆さんに愛される作品をつくっていきたい」と力強く語られておりました。

今回修復された窯では、堤焼特有の技法である「なまこ釉」を施したコーヒーカップが制作される予定です。記念すべき作品は、2012年秋頃に復興記念キャンペーンとして全国の皆様にプレゼントを予定しております。

成果報告

味わいのある斑紋

2012年度の「第2回つながる絆!東北伝統の器プレゼント」キャンペーンで、本プロジェクトの支援にて窯の修復を支援した堤焼で焼きあがったカップ&ソーサーを全国の皆さんへお届けしました。

堤焼特有の技法である「なまこ釉」が施され、器の表面に濃淡の斑が発色し味わいのある模様となっているのが特徴です。

堤窯
堤窯

受け継がれていく伝統の"器"

キャンペーンでお届けしたカップ&ソーサー以外にも、つくり溜めていたカップなど様々な器を修復したガス窯で焼き上げています。

これからも針生乾馬氏が創作する伝統の器を通して、絆が広がっていくことを祈っています。

窯元情報

概要

堤焼は、仙台市の堤焼乾馬窯でつくられている焼物です。300年の歴史を持ち、明治・大正・戦前・戦後と激動の時代を昔と変わらず器を作り続け、現在でも4代目乾馬と長男久馬・次男和馬とで自然豊かな泉区丸太沢の窯場にて伝統を守り抜いています。

歴史

堤焼は江戸時代17世紀末に当時の杉山台(最初、杉山焼といわれた)、今の堤町にその姿を現しました。奥州街道に、その北の守りを兼ねて足軽侍達を住まわせ、その地から大量にとれる良質の粘土で彼らに器などを作らせたのが始まりと伝えられています。現在は乾馬窯が唯一300年の歴史を受け継いでいます。

特徴

黒釉(こくゆう)に糠白(ぬかじろ) 釉を奔放に流し掛けした、海鼠(なまこ) 釉が特徴。仙台で採れる粘土を用いつくられ、自然の趣があふれる皿、壷、酒器、湯飲みなど、素朴な日用品を中心とする仙台ゆかりの焼物です。

Page Top