南部名久井焼は、昭和52年青森県南部町に発祥した陶芸工房です。手びねり成形による作品の独自性や五段式の登り窯が評価され話題を呼びました。制作はすべて手作業で、オリジナル釉薬や独自の粘土の開発を行うなど、先代が確立した技法を継承した二代目によって時代に囚われないデザインが目指されています。震災により破損してしまった登り窯の修復を本プロジェクトで支援しております。
「1300度という高温には耐えられない状態。見た目以上に被害は深刻。」と話してくれたのは、窯主の砂庭大門さん。
長さ18mの5段式登り窯は、震災により土台とレンガ造りの部分がずれて歪み、あちこちに隙間ができてしまいました。
陶芸家にとって一番の復興は窯の再開と話す砂庭さん自身も、復興の助けになればと被害に合わなかった電気窯で作るアクセサリーを販売し、義援金にあてているそうです。
南部名久井焼の独特の色合い、風合いは、この窯でないと出せないという話をうかがい、窯元の皆さんにとっての創作の場を応援したいという想いはより一層強くなりました。
ごつごつした土の風合いの無骨なカップでコーヒーを味わう。
窯元と力を合わせ、そんな、日本人ならではの安らぎの時間を全国へお届けしていきたいと思います。
砂庭大門さんと陶芸家仲間の方々の手によって、登り窯の修復作業が行われました。
修復に先駆けて、まず最初に震災によって壊れてしまった窯を解体する作業が行われました。
長年使ってきた炉内はしっかりと焼かれており、煉瓦同士がくっついて、ハンマーで叩いただけでは外せないほど固まっていたそうです。登り窯の解体というまったく初めての作業の中、試行錯誤しながら協力して行ったそうです。
次にモルタル剥がしの作業に移りましたが、陶芸家仲間の皆さんが「煉瓦を綺麗にして、次の作業に弾みを付けようよ」と最後まで手伝って下さったそうです。
新しい登り窯は奥行き5メートル、幅2メートル、高さ1.5メートルで、使用する煉瓦は約3500個にものぼります。今後は積んだ煉瓦をモルタルで固めた後、空だき等の工程を経て、実際に使用できるようになるそうです。
次回は2012年7月末に予定されている火入れ式の様子をご報告いたします。
2012年7月28日、夏の日差しの中、青森県南部町にて南部名久井焼見学院窯の火入れ式が執り行われました。
窯の修復作業に協力した陶芸家仲間の方々や築炉会社の方々を前に、砂庭氏は「"絆"ということを深く心に刻んで、みんなの絆を感じながらつくった窯だと感じています。
今後もますます精進を重ねて名久井焼の作品をつくっていきたいと思います。」とご挨拶し、約1年半ぶりの窯の稼動に感慨深いご様子でした。
火を入れた登り窯は約6日間かけて徐々に温度をあげ、1300度まで達するそうです。
今回の窯には砂庭氏の作品の他に、陶芸家仲間の作品も合わせて300点程を入れていますが、気候や窯の温度などの様々な要因で焼き具合が変化するため、その間交代で窯の様子を見ながら火を調節するそうです。
使い始めの窯は火の調整が難しいそうですが、そのような不測の事態も楽しみながら作品をつくっていきたいと、窯元がにこやかに語られていたのが印象的でした。
2012年度の「第2回つながる絆!東北伝統の器プレゼント」キャンペーンで、本プロジェクトの支援にて修復した南部名久井焼見学院窯で焼きあがったカップ&ソーサーを全国の皆さんへお届けしました。
窯元砂庭大門氏がひとつひとつ手作業で作り上げた唯一無二のカップには窯元の皆さんの“感謝”が込められています。南部名久井焼の独特の色合い、風合いをコーヒーとともにお楽しみください。
八戸では長い冬が終わり、少しずつではありますが春が訪れています。
震災によってレンガが崩れ、高温に耐えられなくなった窯を地元の陶芸家仲間とともに修復したことで、窯元同士の“絆”がより深まったそうです。
修復した登り窯には、今後も “絆”の火が灯っていきます。
青森県南部町にて、二代目の砂庭大門氏によってつくられる焼物です。南部町で産出する土や豊富な南部赤松を使った手づくりによる造形と登り窯焼成にこだわり、陶器の持つ味わいや美しさ、いつの時代にも囚われないデザインが追及されています。
南部名久井焼の陶器工房は、昭和52年、青森県南部町に発祥しました。故砂庭大作(1943-2006)によって築かれた工房は、手びねり成形による作品の独自性や五段式の登り窯が評価され話題を呼びました。 発祥から35年を経た南部名久井焼は、現在は砂庭大門氏が後継しています。
登り窯焼成 による焼〆(やきしめ)は、焼成に関わる季節や時間、温度、薪の質などにより、胡麻(自然の着色)が黄土色に。釉薬は自製調合による透明感、また独自の掛け分け技法による部分的な濃淡が、作品の表情を豊かにします。ロクロ成形、手びねり成形、タタラ成形を柱に、全て手作業でつくられています。