- プロジェクトでは窯の修復以外にもさまざまなイベントがありましたが、印象に残っているものはありますか?
-
2013年の窯の立ち上げ式です。
まだまだ震災の面影が残っている亘理にAGF®の横山社長(当時)、
女優で震災サポーターの原田知世さんも来てくださいました。
その後にボランティアの方々もお招きして、
新しい窯で焼いたコーヒーカップを使ってお茶会をしたのが
とても印象深いです。
僕たちにとって、器の絆プロジェクトの原点となるイベントでしたね。再び陶芸の道が拓けるんだなっていう、初めての希望でしたね。
- 「希望」ですか。
-
はい、絆の先にある“希望”でした。
自分たちの技術を出せるすべでもありますね。
被災したことでみなさんからいただいた温情に対する感謝の気持ちを
これからどういう形で返していこうかと思った時に、
やはり私たちは陶芸家なので、ものを作って、器や美術品で心を豊かにし、
うるおいをもたらす生活のお手伝いをしたい。
それができるって思いましたね。まさに、希望という言葉が現実味を帯びた瞬間ですよ。
- プロジェクトに参加して、変化を感じられることはありますか?
-
各地でのイベントを通じて、
震災前には体験できなかったようなことに出会えました。
中でも、熊本のイベントでは、
僕たちと同じように心に傷を負った方々がいらしてくれました。
一堂に集まって、絵付けという同じ作業をすることで、
ものづくりを通して、心の伝播ができるんですよ。
心と心の交流を、コーヒーと器を通じて広めていく。
最後には必ず笑顔になるんですが、
それが今の僕の心の糧、よりどころになっています。
習いたての修業時代の気持ちが蘇ってきて、
ろくろに向かうときの姿勢が毎年毎年変わってきましたね。
ちょっとでも前に行こうと。作品作りにも大きな変化を感じています。